「好き」を言語化する技術

人気書評家が「書くこと」についてまとめた本の感想を述べるのは、ちょっと勇気が必要でした・・・
ですので、第5章で著者がすすめている「見出しをつける」という修正方法を使ってまとめてみました。

私の感じた「よかった!」こと3つを整理してみました。

1.文章が肯定的で気持ちいい!
もともとこの本は、
『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない』
を改題したものです。だから想定読者は若い方でしょうね。語り口調がとても柔らかいし、文章がとても肯定的で読んでいて気持ちがよい。内容とは関係ないところですが、文章を読んでもらうには意外にこういうところが大切なのではないかと思いました。

「この具体例が細かければ細かいほど、ほかの人と違う感想になりやすいんですよね。もちろん無理に他人と違う感想を言う必要はないのですが、それでも、あなた個人のオリジナリティある感想を書けたほうが、あなたが書く理由があるじゃないですか。だから私は、できるだけ細かい点が挙げられた感想が読みたいな、といつも思っています。」(82ページ)

若い人同士の会話を聞いていると、同じような印象を受けることがあります。世代の違いと片付けたくはないですが、こんな柔らかい文章は私は書けないな、と感じてしまいます。「なりやすいんですよね」と共感しながら「もちろん無理に~必要はないのですが」と相手を気遣いつつ、「あなたが書く理由があるじゃないですか」と励ます。最後は「読みたいな」とアイメッセージ(私は~という感想)で締めくくっています。ほんと、人柄が伝わってきます。特に若い方とお話するときは、このくらいの気遣いをしながら話をしたいものだ、と思います。

2.文章を発信することの危うさ
一方で、インターネットで誰でも簡単に言葉を届けられる場ができたことで、危険なこともあると著者は言っています。この点は私もなんとなく感じていたことで、まさに言語化してもらってすっきりした感があります。

「自分の発信の影響範囲を考えていない人の言葉が、びゅんびゅんといろんな人に届く。すると、みんな他人に届きやすい強い言葉を使うようになる。そのうち、自分の本心とは遠い、行き過ぎた言葉が出回りやすくなる。」(72ページ)

他人の言葉で自分の感想が染められてしまう怖さ、そして自分の強い言葉が社会に影響を与えてしまう怖さ。どちらにも気をつけたいと思います。

3.「好き」を言語化する「哲学」
何のために苦労して言葉にして発信するのか。著者はそのことにも触れています。この点についても私は強く共感します。

「冷静に自分の好みを言語化することで、自分についての理解も深まる。それでいて、他者について語っているのだから、自分じゃない他者にもベクトルが向いている。すると、他者の魅力や美点に気づく力も身につきます」
「せっかく出会えたものや人について語ることは、自分の人生の素晴らしさについて語ることである」(49~50ページ)

3章以降の具体的な文章の書き方もとても興味深く勉強になるのですが、1章と2章の著者の「好き」を言語化する「哲学」にも共感してしまいました。自己理解と他者理解。今、私にとってとても大切なことだと位置づけているからです。

「好き」を言語化する技術 三宅香帆著
ディスカヴァー携書

2025/1/3

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この記事を書いた人

・キャリアコンサルタント(国家資格)
・2級キャリアコンサルティング技能士
・日本キャリア開発協会会員(CDA)

電気メーカーで技術者として働く。
コミュニケーションスキルを磨くためにカウンセラーの勉強を始めたが、その奥深さにハマり国家資格を取るまでになる。
マンツーマンのカウンセリングを得意とし、ビジネスキャリアの相談や職場の部下指導には定評がある。

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