私の音楽の嗜好もクラッシックからオペラ、ジャズへと広がり、歳とともに分かりにくい方向に向かっているように思います。
「正解はない」と言われるキャリアカウンセリングにおいても、上手くいったのかダメだったのか、いったいどうしたらよかったのかと、内省と試行錯誤が続きます。
答えが出ないことに対して正面から向き合う覚悟とでも言いましょうか、そういうものは歳とともに身についてくるものなのかもしれません。ネガティブ・ケイパビリティとは、こういったもやもやから逃げずに受け入れることなのだと理解しました。
そもそも私たちの脳は「分かる」ことを欲し、分からないことがあると不安になる仕組みになっています。
その不安を回避するためなのでしょうか、教育において私たちは、設定された問題に対する解答を「早く早く」と急かされ続けてきました。
それでも人間は、答えの出ない状態に留まろうとすることがあるのですね。
芸術家は、曖昧な状況に耐え、切れ切れのものが均衡をとり一体となるのを待ち受ける能力が創造性の源になっています。
精神科の治療において患者さんは、何事も決められない、宙ぶらりんの状態に耐えている過程で自分の道を見つけていきます。
「ネガティブ・ケイパビリティが最も自戒するのは、性急な結論づけです」
「素養や教養、あるいはたしなみは、問題に対して早急に解答を出すことではありません」
と著者は言います。
この著書を読んでいると「なんだかよくわからないな」という気持ちのまま人生の課題に向き合い続けることは、実は幸せなことかもしれない、と思えます。
2023/2/26