とても好印象の「教科書」です。厚さの割にはスイスイ読めて気持ちいい。
理由の1つ目は、全体的に主張が片寄っていないことです。著者の知識と経験はすごいものを感じますが、それを強要することなく読者の理解に任されています。「キャリア選択のあり方を科学的に決めることなどできない。唯一絶対の正解などないのだ」という考え方が心地よさを感じさせます。
2つ目は、リアルな事例が豊富なため理解が深まることです。教科書というより実践事例集と言った方がいいかもしれない。実際、著者は「ハードルを下げて「本当に小さな一歩」を」と言っています。私自身、いろいろ迷いがあって多くの方の話が聴きたいと思う。この本を手に取ることでさらに視野が広がる気がします。
3つ目は、守備範囲の広さでしょうか。言語化による自己理解、市場価値、キャリア選択、転職後の課題、キャリア支援、組織開発に至るまで手抜きなしの印象です。若者とシニア、ジェンダーギャップについてもページを割いています。
著者は冒頭で、「迷うたびに手を伸ばす。そんな「地図」になれたらうれしい」と言っています。まさに地図といえます。
私は自分のキャリアを棚卸ししているときにこの書籍に出会い、自分を横に置いて行きつ戻りつしながら読み進めています。
キャリアづくりの教科書 徳谷智史著
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2024/5/19